同僚との思い出


急逝した同僚のMくんとは実は古くから面識があった。
三鷹の国立天文台にいた時に部屋が近かったこともある。
私が佐用の人となってから、彼と再び遭遇したのは関東のある公開天文台で行われた研究会だった。

 その研究会で、私は、今、西はりま天文台で「@site」という呼び名で動き始めているプロジェクトと、それを想定して設計された「なゆた望遠鏡」との関係について発表した。「@site」とは 「(SETI)@home」と対極に位置するものという意味で考えた名称で、なゆた望遠鏡を使った研究観測に、一般市民が“現場で体験的に”参画できるというプロジェクトだ。この研究会で、私と同僚Sは、一緒に暖めてきた@siteのアイデアを業界に問う意気込みだった。
 即座にケチがついた。しかも相手は日本の赤外線天文学の草分けと言われるO大先生。研究観測のなんたるかなど市民に解るわけが無いし天文学者のやっていることを軽く思われる、と言う論旨であった。私は全く逆の立場で、観測天文学者の営みを垣間見せるということは、理解は不十分であってもマスコミで取り上げられる研究成果についての現実感を想像させる手助けになるし、天文学者の営みに対する信頼感を生じさせる、という論旨。この論争は夜の懇親会まで続き、途中、T大の若いのが意味不明の理由で大先生の側について私に論破されたりはあったものの、O大先生と私との対立は平行線が続いた。
 その時だ。「僕はつむつむさんの言っていることが正しいと思います!」きっぱりと言い放って加勢して来たのがMくん(当時、岡山天体物理観測所)だった。その後、同じ岡山で磯部先生のゼミで一緒だったYくんも加勢に加わり論争は3対1となった。その一年後だったろうか、西はりまに来ることになったと聞いた新人がなんとMくんだった。私は志しが同じ人材がやってきたことを心強く思った。彼は「@site」の共同提唱者であるSくんともあっという間に仲良くなり職場で一番の友人になった。二人とも一緒に第一子を授かった。

 今日執り行われた告別式。私とSくんは一緒に受付を勤めていたが、出棺の担ぎ手に二人で加わらせていただき火葬場までMくんを見送った。Sくんは放心状態で棺が焼却炉に入って行くのを見つめていた。葬儀場に戻ると会場はすっかり寂しくなっていて、私と彼と二人の上司でパネルに貼ったMくんの写真やゆかりの品々を片付け、ご遺族に渡すために黙々と整理した。

Posted: 木 - 5月 24, 2007 at 11:47 午後            


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