オシロスコープ


今日は休日を利用して出張した。出向いた先は、私がぺーぺーの学生だった頃に観測で一緒に仕事をした方のお宅だ。長い事、海外で活躍されていたせいか、いろんなことを先回りして親切にしてくださる。内心、とっても恐縮していた。彼はずっと憧れていた(私にとって)ヒーローの一人なのだ。

 打ち合わせは開発中のソフトウエアを見せてもらって意見を述べることだった。このソフトウエア、処理的には通常の売りもんのソフトでは超弩級に重い処理のはずなのにリアルタイムで面白いほどクルクル反応する。

 相当なプログラマーと思われますか?

 いえいえ。彼は生粋のハードウエア屋さんなのだ。高機能OS時代のソフトウエアというものは、OSが提供する膨大な種類の機能をブロックのように組み立てるのに近い。プログラマーに要求されるのは、特定のプラットホームに準じたブロックの種類と組み合わせ事例を覚えることであって、新規のアイデア(アルゴリズム)を創造するというよりは法令を適用する弁護士のようなものだ(彼の表現を使わせていただきました)。

#最たる例が、某大量流布OSでしか通用しない事例を暗記しているだけのプログラマーである。

 彼のプログラムは徹底的にハードウエアの仕組みを利用して、最も効率的な速いアルゴリズムを考えて作られている。ハードウエアの仕様を知っているなんてレベルでなく。その仕組みを捻って新しい機能を実現してしまうような人なのだ。

#そんな人物をもう一人知っている。彼はロータリーエンジンをいじって壊して知り尽くした上で、メーカーのエンジンマネージメントプログラムをメーカー以上の内容に書き換える。

 そんな憧れの人と楽しい時間を過ごした後、もっと楽しい時間が待っていた。仕事帰りに彼に案内していただいて中古のオシロスコープを買いに出かけたのだ。

「高い金を払ってデジタルオシロの新品を買う必要はない。古いアナログオシロ、しかも日本製品は目利きが見れば、本当に使い易くて性能が良いものを安く手に入れられる」

最近のデジタルオシロはパネルがみんなタッチスイッチになってしまって、覚えづらいし、レンジなどの設定を誤ったときにとっさに修正できないんだそうだ・・・

ということで行ってきました「山陽電子商会」!

 自営の電気屋さん規模の単独店舗。店内は秋葉原のパーツ屋さん風。彼は入店すると店主にあいさつするや奥の倉庫へと入って行った。ついて行くと棚いっぱいに積まれた計測器たち。彼は店主と楽しそうにやりとりしながらパパパっと候補を3個体に絞り込んで行く。メーカーはIWATSU。発売時期が相前後した100MHzのアナログオシロ3現象同時計測の機種。私にわかるのは外観くらいしかないので、中古パソコンを選ぶ要領で、結局、最も古い1台を選んだ。

ブラウン管周囲のカバーやパネル面やスイッチ、プローブを繋ぐ端子が3台の中で最も状態が良かった。15年以上立っているとは思えないほど特に端子が奇麗だった。傍目には買って数年くらいに見える。直射日光が当たらない場所で使用され、保管時にはカバーでもかけていたのではないかと思えた。

 レジまで持って行くと、お金を払う前に、彼がパパパっと全スイッチや機能の動作確認を済ませ。

「これでいい。スイッチはどれもヘタってないし、特にブラウン管の解像度が非常に良い」

と太鼓判を押してくれた。5万円なり(アナログでもデジタルでも、新品でどの程度のものが買えるか調べてみるが良い)。

「今のオシロは消耗品。2年も使えば壊れて買い換えと考えて良い。スイッチなんか基板だから、使えばじきに駄目になる。この頃の製品はずっと使い続けることを考えて頑丈にできているんだよ。使い込むと手に馴染むしね。」

店主の言葉も印象的であった。



こうして「つむつむ電子工房」にオシロスコープが導入された。PICマイコンの動作クロックは20MHz。このクロックがきちんと見られるスペックを持つ15年ものである。

Posted: 日 - 3月 26, 2006 at 02:50 午前            


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