なゆた望遠鏡のPA終わる


昨夜でもって、なゆた望遠鏡のPA/ポインティング・アナリシス(テレスコープ・アナリシスとも言う)が終わった。足掛け3週間を要した。PAっていうのは、望遠鏡の軸ズレとか、向ける方向によって異なる自重変形を割り出し、望遠鏡の狙いを補正する係数を求める作業だ。

 これをやらないと、なゆた望遠鏡は本来の高精度性を発揮しない。だけど、この作業はとっても手間がかかる。そもそも、なゆた望遠鏡の場合、PAが自動観測プログラムになっている。設定をすれば、勝手にいろんな方向にある星の画像を撮って、星像の位置からズレ量を評価していって最後に係数を求めてくれる・・・のであるが、これを巧く働かせるのはそう簡単なことではない。

 まず完全自動で動かすためには、初期設定にコツが要る。それをモノにするには手探りでソフトを書いた人の意図を読み取っていかなければならない。次に自動プログラムで巧く観測が終了できるようになったとして、そこから求める補正係数は20個もある。しかも、その全てを計算すれば精度が上がるわけではない。どの補正係数(どういう歪み)まで考慮に入れればよいのか。これにもコツが要る。一度、変な補正係数を入れてしまうと、自動観測プログラム自体が途中で止まってしまう。望遠鏡が星を滑らかに追尾しなくなり、望遠鏡が星を捉えたと判定されなくなって、先に進まないからだ。

 観測プログラムを最後まで通し、係数で失敗、また昔に戻ってやりなおし。そんなことを繰り返しているうちに「あっ」と言う間に1週間が過ぎる。晴れなければ観測できないのは言うまでもない。

 昨夜までに技術的・経験的に見通しは立っていた。それでも完璧な設定のPAをやるために予備的なPAが3回必要だった。その度に補正係数を間違いなく決め、無駄無く観測を終える事ができた。それでも要した時間は6時間。お客さん向けの観望会が終わってから夜明け直前までかかった。ハイテクというのは裏に凄いノウハウと経験が隠れているということだ。

#「ボタン一発。全自動!」 使い手に優しい技術が実は「最も難しい技術」なのだ。

「素人向けにボタン1発から始めて、徐々に望遠鏡をマニュアルで動かす大変さを理解してもらう体験を提供してゆけばいい」

こんなことを言う人がいた。全く逆である。不完全な間は、好むと好まざるとに関わらず、マニュアルで試行錯誤を強いられるのである。完全自動化は経験と技術が集大成された究極の姿であって、それをマニュアルに戻すのはただ自動化された項目を目的に応じて外すだけである。自動車でもカメラでも洗濯機でも全自動から商品化されたものはない。そんな自動化を悪と言う人もいる。自動化が不思議な魔法で安易に実現され、自分はいつの間にか時代に置いて行かれたと思っているのかもしれない。しかし・・・

努力が足りないのは自動化の仕組みを知らない「アンタ」ですから!!

Posted: 土 - 3月 25, 2006 at 12:23 午前            


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