VTOS搭載EBCCDカメラの画質試験


VTOSにはEBCCD(Electron Bomberedment CCD/電子打ち込み式CCD)というカメラを使っている。出力はモノクロのアナログビデオ(EIA=NTSC)だが、テレビ受像機のことを理解している人ならわかるだろうが、ビデオ出力というのは水平方向の走査線に応じて、画像は奇数行と偶数行とが1/60秒間隔で出力され表示される。こうして1/30秒で全画像情報が表示され、目の残像現象によって滑らかな動きとして認識される。このことをインタレースという。

 ところがだ・・・このインタレースという方式はスナップショットの質を問う画像計測では問題になることがある。動きのある動画をキャプチャーすると、1/30秒間に出て来る奇数行と偶数行のデータを組み合わせて1枚のフレームを合成した時にタイムラグのせいで食い違いを生じてしまうのだ。

この画像は地球大気で揺らいでいる星の像をVTOSのEBCCDで撮影しキャプチャーしたものだ。横に縞模様が入っているのがわかるだろう。これは奇数行の画像と偶数行の画像が取得される間のタイムラグによって生じたブレなのである。この間にわずかでも星の像の揺らぎは変化しているのである。
 上ような画像に対して画像処理をかけようとすると、奇数行と偶数行を分けて取り出し、2枚の画像とするしかない。そうすると画像の解像度は半分になってしまう。高い分解能を目指すVTOSの目的としては、これはもったいないということになる。
 ところでCCDカメラと一口に言っても、ビデオカメラに特化され奇数行と偶数行を分けて露出して信号を出力するインターライン方式(最初からインタレースに合わせて出力を出すビデオ向けのCCD)と、画像を一度に露出して画像を一度に出力するフレームトランスファー方式(主にスチルカメラ向けのCCD)とがある。
 それで使っているEBCCDカメラのCCDを調べてみると、これがなんとフレームトランスファーCCDを使っていたのである。つまりCCDは一度に全画素を露出して出力しているのに、アナログビデオの信号に変換する際に、時間差のある2フレームを使い奇数行と偶数行の情報を交互に組み合わせてインタレース合成しているようなのだ。

フレームトランスファーCCDからインタレース信号を作る方法はこんな感じだ。

露出:(0o 0e) (1o 1e) (2o 2e) (3o 3e)・・・
#奇数行(o)と偶数行(e)は一度に露出されている。1,2,3は何回目の露出かを示す。

インタレース合成:0o (0e 1o) (1e 2o) (2e 3o)・・・
#最初の奇数行のデータを捨ててしまって、以降、1回づつずれた露出から奇数行と偶数行を合成する。

こうすると動きは滑らかに見えるのだが、キャプチャーした1フレームの奇数行と偶数行の間に1/30秒のタイムラグが生じてしまう事になる。これはキャプチャーした連続する2つのフレームの奇数行と偶数行を組み合わせてみればわかる。共同研究者が実験で確かめたところ、まさしく、このような処理がなされていることが判明した。
 ところが、ここで話がまた一転したのだ。VTOSに使っているEBCCDと同じ型番のカメラでも現行品を含む後のシリアル番号では、このようなインターライン合成をしていないというのである。さっそくメーカーから後期型のデモ機を借りてテストしてみた。ここからが本題・・・

 さてシリアル番号の違う2台でインターレース合成してるか否かを比較するにはこうすれば良い。カメラの前で縦にストライプの入った絵を左右に動かして線のブレ方を見る。

ディスプレイに立てかけてある板をカメラの前に置き(もちろん)フォーカスを合わせてから・・・
動かす!動かす!動かす!
そうして2台からキャプチャーした画像がこれだ。

こっちがVTOSのもの。

こっちがメーカーから借りたデモ機(後期ロット)。

インターレースしてると動きが奇数行と偶数行の縞模様になりフレームトランスファーだと単純にブレる。
どうやら初期ロットのカメラでもファームウエアの買い換えで後期ロットと同等にできるらしいので、明日はメーカーに送って書き換えを頼もうかと・・・

Posted: 木 - 8月 17, 2006 at 01:10 午前            


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