SXW赤道儀の使いこなしアイデアを試す

昨夜は私にとって年明け初の星撮り機会の到来だった。
予報は晴れで気温は3月なみに暖かい。しかも朝から勤務ではあるものの、翌日(つまり今日)は午後から勤務なので、ちょっとくらい夜まで残っても睡眠はなんとかなる。

日中から、ちょっとした時間を見て、赤道儀に搭載するカメラ&ガイド鏡のバランス取りとアライメント、赤道儀の赤緯方向のフリー回転をスムーズに調整。そそくさと夕食をとって暗くなるのを待った。

今日のオートガイド試験での試みは二つ。一つは望遠レンズをつけたカメラを2点で支える新しい治具の投入。そして自動導入機能でオートガイドに影響すると思われる座標校正(これもアライメントと言う)方法に対するアイデアだ。

IMG_0750
これが望遠レンズ付きカメラを支える新投入の治具。
通常、カメラ本体の三脚ネジだけで全体を支えると、望遠レンズの重みでカメラが回るように動いてしまう。レンズの先を鏡胴外径より大きめのガイドスコープリングで固定すればこれを回避できるという寸法。赤道儀に望遠鏡などをつけるアリガタを段違いにして繋いで、下段の方にアルカスイス規格のクイックリリースを直交に2段重ねカメラの位置を前後左右に調整して取り付けられるようにしてある。レンズの種類によって外径が変わったり、カメラ本体ごとにレンズの高さが変化する分は、ガイドスコープリングの内径に余裕を持たせてフレキシブルに対応できるようにしてある。PENTAXのカメラ、200mm F2.8、300mm F4、500mm F8(ミラーレンズ)クラスの望遠レンズならOK。カメラは縦位置でも横位置でも取り付けOK。

18時過ぎから準備を始めて、赤道儀の自動導入機能を使うためのアライメントを行った。
決め手は1スターアライメント。ビクセンSX赤道儀の泣き所はサーボモーターのレスポンスの悪さ(特に赤緯軸)によるオートガイドパラメータの設定の難しさ。それと並んで言われるのが、きちんと複数の星でアライメントを取って自動導入の精度を上げてしまうと、赤経軸の駆動と赤緯軸の駆動とが連動して動作してしまうことである。赤道儀の設置で生じる誤差や赤道儀の精度で生じる誤差を解消しようとするため、星の日周運動を追尾する誤差を補正しようと赤経軸を駆動すると、赤道儀の精度を補うために赤緯軸も一緒に駆動してしまう。極軸の設定誤差による赤緯方向のズレを補正しようと赤緯軸を駆動すると同様に赤経軸も動かしてしまう。これによってオートガイドの修正プロセスが計算通りにいかなくなるってえわけだ。

#唯一の回避方法は赤道儀の制御器(ビクセンのStarBook)に極軸が正確に合った状態と認識させること

ネットに紹介されている解決方法は自動導入のアライメントをきちんと行って目標天体を導入したら
#赤道儀の電源を切ってStarBookを再起動させろ
である。こうすればStarBook上に記録されている赤道儀の各種誤差情報がリセットされてしまうので、赤経軸と赤緯軸の駆動が連動しなくなる。

確かにそうだ。そうなんだけれども・・・ちょっと待て!
(紹介している情報源にも述べられていることではあるが)それだと目標天体を変更するたびに観測前のアライメント設定を最初からやり直すことになる。
(やはり述べられているが)それは超面倒くさいだろう。

そもそも自動導入望遠鏡の初期設定として行うアライメントとは何か。
天文台に設置されている(例えば私の勤め先にある)なゆた望遠鏡を始めとする大型望遠鏡には「ポインティングアナリシス」とか「テレスコープアナリシス」というものがある。天球上の様々な星を導入して、その位置ズレを計測して、望遠鏡の設置誤差(赤道儀だったら極軸の設定誤差)、駆動軸の直交度の誤差など数十項目の誤差パラメータを算出して補正テーブルを作成する。天文台の望遠鏡は市販の小型望遠鏡に比べれば超絶精度で作られているので、補正テーブルが完備されればオートガイダーなんて使わずとも、何十分でも正確に追尾する。オートガイダーと使うとかえって悪くなる場合さえある。
まあ、それは置いておくとして、市販の自動導入望遠鏡のアライメントとは、ポインティングアナリシスの超簡易版である。補正係数の数も少ないだろうが駆動系の精度も悪いので始末に負えなくなるわけである。

しかしポインティングアナリシスだということだと最初の2つ3つで何が補正されるかは見当がつく。
1スターアライメント(つまり天球上の1点)を導入して得られる誤差は
#望遠鏡のホームポジションの設定誤差に割り当てられるはずである!
詳しく言えば最初の星がズレている原因を望遠鏡が動き出すスタート地点の誤差として割り当てるはずなのである。これは文献やメーカーに質問して裏を取る必要もないくらいあたりまえ。それ以外に誤差原因の持っていきようがないからである。
2スターアライメントをやって2点目を導入して得られた誤差は・・・これも常識的に考えて極軸(経緯台ならば水平度)の誤差に割当てられるはずである。3点目以降は(ちと詳細は不明となるが)望遠鏡の駆動軸に設けられたエンコーダー(角度検出器)が天球に投影する座標(曲線の歪みや目盛り間隔)が、現実の天球投影された座標とどのくらいズレているかを補正する解析関数のフィッティング係数に割り当てられているはずだ。

以上を根拠として、精度の悪いSX赤道儀の赤経・赤緯駆動の連動を避ける、つまりStarBookに極軸が合っている赤道儀として振る舞わせるのは
#1スターアライメントだけを実施して使用する
ことで実現できる。ホームポジションの誤差だけを補正テーブルに入れて使うわけである。

これは原理的なことなので間違いはない。これを行えばSX赤道儀で生じる赤経・赤緯軸の連動による不具合は回避される。これでまだ追尾が悪ければ、ほかの要因を疑って潰せばいいのである。

まとめよう。
1)SX赤道儀の自動導入アライメントは1スターで行う。その際、望遠鏡の設置はできるだけ正確に。
2)目標天体が天球の東側(南中前)なら東側の星を使う。西側なら西の星。できれば目標天体に近い星を使うと導入精度が上がる。
3)目標天体が子午線をまたいでしまう場合は、その方角の星でアライメントをやり直す。
これでよし!

目標天体が天球の同方向側にいるならば、オートガイドの2軸連動を回避しつつ、自動導入機能を使い続けることができる。

こうして撮影した昨夜のオートガイド試験の結果はこんなになった。
IMG_0013
プレアデス星団 Tamron SP 500mm F8、PENTAX K-01、ISO1600、露出は7分。
Gerror_140124
画像右下1000x1000を切り出した画像。

そして自動導入を使って次々と撮った昨夜の画像。
カリフォルニア星雲
IMG_0015
ISO1600、露出は10分。

馬頭星雲あたり
IMG_0016
ISO1600、露出は10分。

馬頭星雲は3枚撮ったのでコンポジットして少し処理してみた。
IC434_140124_rev

これ以上はオートガイドソフトのパラメータチューニングで。

ところで昨夜の撮影では複数枚取得した画像間でわずかに視野回転が認められた。ようするに極軸のズレである。
ビクセンの極軸望遠鏡の日付、時刻目盛を合わせる方式だと、私の目ではちとつらい。照明付きのルーペが必要だわな。
Kenko Skymemo タイプの極軸望遠鏡がいいのになあ。

−−−−− 1月28日 追記 −−−−−

27日は休園日。観望会など接客対応がないので2時間連続オートガイドまかせっぱなし撮影を初めて試した。
8分露出を8枚。うち6枚が成功。失敗した2枚は天体が南中した後のものでドイツ式赤道儀では致し方ないと言えるだろう。
成功した6枚をコンポジットして調整した結果が以下
IC434_140127_c
露出が増えた分、トーンカーブの低輝度部の立ち上がりを緩やかにできたので、背景の暗い星が自然な明るさで表現できている。